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第三回 樹木をきれいで健康に保つために、必要なお手入れ『施肥』編
更新:2023年07月05日 公開日:2018年06月25日
前回に引き続き『樹木をきれいで健康に保つために必要なお手入れ』について、造園・庭師の目線からご案内をしたいと思います。
樹木に栄養を与えることで、健全な生育の補助や病害虫に対して抵抗力を増進させる施肥
施肥の目的は樹木の健全な生育を助けることです。
病害虫被害に対する抵抗力の促進や、きれいな花を咲かせる、果実の実りを良くする等の効果があります。他にも土にも栄養を与えることで微生物の繁殖を促進させて、土壌の改良にも役立ちます。
肥料の要素は窒素・リン酸・カリ・カルシウムの四元素です。
樹木は、空気中や水、土壌から、炭素・酸素・水素等の元素を吸収しますが、窒素・リン酸・カリ・カルシウムの四元素は土壌中に欠乏しているので、肥料により補っていく事が必要となります。
肥料の要素
要素 | 場所 | 効果 | 欠乏した場合 |
窒素(N) | 葉肥 | 葉の成分となるたんぱく質と葉緑素を作る。 | 葉が枯れたり、葉の色が黄色に変色したりする。 |
---|---|---|---|
リン酸(P2O5) | 花肥 実肥 |
細胞を増加させ、花や実の成長を促進する。 | 葉が枯れたり、葉の色が変色したり、花や実の成熟が悪くなる。 |
カリ(K2O) | 根肥 | 新陳代謝をよくして根や茎の発育を促す。 | 抵抗力が弱くなる。 |
カルシウム(Ca) | 根肥 | 土の酸性を中和する働きがあり、根の生育を助ける働きがある。 | 作物の生育不良や生理障害、また根腐れ・芯腐れの原因になる。 |
肥料の分類
大まかに分けると有機質肥料と無機質肥料があります。
・有機質肥料は、植物質肥料・動物質肥料とあり、植物動物の死骸や排泄物などを原料にしたもので、天然肥料になります。土中の微生物が肥料を分解した後に植物が吸収し、ゆっくりと長く効果を発揮する緩効性の肥料です。土の健康には大変良いのですが、臭いがあります。
・無機質肥料は、鉱石などを合成させた肥料になります。 要素を1成分しか含まないものを単質肥料(リン酸肥料・窒素肥料など)といい、要素を2成分以上含むものを複合肥料といいます。水に溶けやすいので、臭いもなく速効性があり、気軽に利用できますが、使い過ぎると土の環境が悪くなります。
肥料の時期
元肥(基肥)
植え付け・植え替えをする際や、休眠期(12~2月頃)に施す肥料を元肥(もとごえ)といいます。ゆっくりと効果を持続させる有機質肥料が主に使われます。
追肥
元肥とは別に必要に応じて植物の生育途中で追加する肥料の事をいいます。速効性がある無機質肥料が主に使われます。
花木や果樹は年2回ほど施肥をします。春の生育に先駆けて休眠時期に与える事で、栄養を蓄える事ができる寒肥と、花が咲いた後や実が成った後に、樹勢回復として栄養を与える御礼肥があります。
施肥の方法
樹木の高さ・種類に合わせた方法があり、根の長さによって穴を掘る位置深さを決め、適切な分量・濃度・溶解速度を考え配布していきます。
高木施肥
●輪状施肥・放射状施肥・隔年輪状施肥
溝(深さ20cmほど)を掘り、肥料を与えます。
●環状施肥・輪肥
木のまわりに深さ20㎝程の溝を掘り、肥料を平均的に敷き土で覆います。
溝の位置は枝の先の下くらいに掘ります。
●つぼ状施肥・壷肥
樹幹を中心に20cm以上の深さの穴を放射状に掘って肥料を散布し、土で覆います。
●放射状施肥・車肥
根と根の間に沿って放射状に溝を掘り肥料を与える方法。
溝の深さは15~20cm程で、肥料を平均的に敷き土で覆います。
生垣施肥
木の両側に深さ20㎝程の穴を掘り肥料を入れて土で覆います。
低木施肥
低木類は、一本だけ植えている場合は、高木施肥と同じ方法で行います。また、並んで植えられている場合は、生垣施肥と同じ方法になります。
花壇地にまとまって植えられている場合は、緩効性の肥料を1㎡当たり3箇所程度の穴を掘り、肥料をいれ土をかぶせます。化成肥料は、均一に全体に撒きます。
寄植施肥
植え桝等にまとまって植えられている場合は、緩効性の肥料を1㎡当たり3箇所程度の穴を掘り、肥料をいれ土をかぶせます。化成肥料は、均一に全体に撒きます。
全面散布
土壌表面に散布し、管理機などで軽く耕す方法になります。
施肥は、肥料の種類も多く、樹木や草花がそれぞれ必要とする栄養素を見極めるのはなかなか難しく、分量にも注意が必要です。
しかし、正しい知識を持って、的確に施肥できれば、樹木や草花をとても良い状態で健康に長く保つ事ができます。
葛飾区 小林造園のコラムをお読みいただきありがとうございます。
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